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【 VOL.7】   晩秋は風の見える季節  
     
 
 
カーニバル
 
 晩秋は風の見える季節
 

湖畔に群生するススキの穂は完全に開ききり、ふわふわと軽くなった白い毛が波のように連なっている。
 この波の上も魂となったら歩く事が出来るのだろうか。
 ふと妄想すると、それに合わせるように 風がひとすじの道を描いてススキの中を突きぬけ、ずーっと向こうの木の葉をバラバラと落として去って行った。 
  まるで、映画のワンシーンを見るようだった。
 つい、こんな妄想に走るのも秋が季節の中で一番、死のイメージに近いからに違いない。 冬の厳しい自然の中には新しい命を抱え、それを必死で守る力強さと暖かさが隠れているが、晩秋には今まで好きに生きてきた命が、捨て去っていった残骸の匂いがする。

 

この日はいつものサイクリングではなく、同居人を喜ばせようと、実のついた野バラの枝をさがしに湖畔に来た。 夏、全てを隠してしまうような勢いだった水際の草々はすっかり枯れ色となり、あっちこっちに倒れ、溶岩の大きいのも小さいのも乱暴に混ざる地面ののぞく水辺は、近寄ってみれば打ち捨てられた空き地の風景とたいして変わらない。

実のついた野バラは簡単に、しかもそこらじゅうで見つかった。バラ自身の葉もすっかり落ちてしまい、周りじゅう枯れ色の中に朱がかった赤い実をつけた低い木が水際すれすれのところまで、いくつもいくつもある。切って手に取ってみれば色も鮮やかで可愛い実をいっぱいつけているのに、枯れ草の中では周りに気遣ってるかのように、たいして輝くこともせず、地味にとけ込んで収まっているのが本当に不思議だ。

野バラのトゲには注意しなくてはいけない。普通のバラより鋭く堅いのだ。 手を傷つけないように気をつけて気をつけて、4~5本の枝を自転車のカゴに載せる。
 家に帰れば同居人が私の壷に上手く生けてくれるだろう。 そして、その時はバラの実はバラの実だけの美しさを自信もって主張するに違いない。

次の日、あれだけ気をつけていたのに、右手の親指の腹と薬指の背がプツリと小さく腫れ痛い。虫眼鏡で見ても何も見えず、無理にしぼってみても汁しか出てこない。 しかし、バラのトゲは入っているのだ。

全く、目に見えないトゲはどこに刺さっても抜くこともできず、いつまでもグズグズ気になる厄介者、だ。

2010.12.15
追分 めぐみ
 
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