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【 VOL.6】   『ザーザーと雨が降る』  
     
 
 
 
 『ザーザーと雨が降る』
 

私が、雨は本当に「ザーザー」と降るのだと実感したのは、ここ富士山の麓に住むようになってからだ。

私の生まれ育った所は兵庫県も大阪に近い、自然などほぼない工業都市にある住宅地だった。 小さい頃は下水環境がまだ整ってなくて、台風が来るとよく家の前の小さなドブ川があふれ、早下校となった学校の 帰りに川との境が分からなくなった道を長靴の中までボチャボチャにしてノロノロ帰るのは年に1度か2度の楽しみだった。夕方から夜に来る台風は風雨が雨戸を叩きつけ、停電もしょっちゅうで「こわいこわい」と叫びながらも内心、それの長引く事をロウソクの炎を見つめながら祈っていた。

こちらに越してきて感じたのは、台風の時だけでなく普段のあたりまえの自然現象の全てが、街と比べてキリリとして厳しいのだ。 風も全くない時に降る雨が、時に本当にザーザーと、都会とは雲にあいている 穴の数が違うのではないかと思える程、密度が濃く、連なって、まっすぐに降ってくる。  どう表現すればいいのだろう。  雨降る庭の風景を切り取って、額縁に収める事ができるのではと思える程、一律に、まっすぐと大量に、降っているのではなく風景に張り付いているかの様な雨なのだ。  家の前の狭いアスファルトの道は、この雨で瞬く間に「川」と化す。 大げさな表現ではない。このような雨の降ってる時、この道を初めて見た人は、これを「道」とは決して思わないだろう。
5合目まで整備された富士山のスバルラインをはじめ、我が家より上手のアスファルト道に降る雨を次々と集め、下へ下へと水はかなりの勢いで流れてくる。  ところが、さらに驚く事に、溶岩地であるここは雨が上がるとその水引も一瞬なのだ。 大雨の後、我が家の庭にも前の道にも水たまりは残っていない。

思えば私は「温室育ち」だった。 今もあえて自然に沿って建つ別荘地に住んでいるのでなく、都会並みに隣家がくっついて建つ住宅地の中の一軒である。 それでも標高が800mあるこの辺りの自然現象は、中 年になった私の感性を今もザワザワと刺激し続けてくれるのだ。

そうは言うものの、ここに来てすでに20年。 生まれ育った街で過ごした年月と同じだけ時が流れた。 だけど、なぜだろう。 ちっとも、まだ、ここの自然に慣れた気がしないのだ。

2010.11.30
追分 めぐみ
 
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